『寄生獣(きせいじゅう)』は1988年から1995年にかけて『月刊アフタヌーン』に連載された岩明均さん原作の漫画です。
イントロダクション
『月刊アフタヌーン』は新人漫画家の発掘に力を入れており、江川達也さんのアシスタントを経て初の連載作『逮捕しちゃうぞ』をヒットさせた藤島康介さんの2作目『ああっ女神さまっ』を生み出しました。
そして『ああっ女神さまっ』に続いて『月刊アフタヌーン』の看板作品となったのが岩明均さんの2作目の連載作である『寄生獣』です。
『寄生獣』は人間の脳を乗っ取り、次々と人間を捕食していく空から降ってきた謎の寄生生物と人間との戦いを描いたホラーアクションです。
人間を食い殺すグロいシーンがありながらも人間の存在意義や人間と自然の共存を考えさせる重厚なテーマが根底にあることで深みのある作品となっており、連載当時はかなり世間の話題になっていました。
その作品性は多くの知識人も刺激して文芸評論家の加藤典洋さんや哲学者の鶴見俊輔さん、竹田青嗣さんらが絶賛しています。
その後ハリウッドの映画プロモーターが『寄生獣』の映像化権利を買い取ります。
一説には1991年に公開された『ターミネーター2』に登場する敵役のT1000が体を変形させて刃物になるという描写は、『寄生獣』で人間に寄生したパラサイトが変形して人を殺す描写をパクったものなのでジェームズ・キャメロンが権利ごと買い取ったなんていう噂もあります。
ジェームズ・キャメロンは親日家として有名で日本の作品を数多く見ていることは確かなようなので『寄生獣』を見ていても不思議ではありませんが、真偽の程はわかりません。
いずれにしても『寄生獣』の映像化権利はアメリカに渡り、残念ながら映画化は実現しないまま月日が流れてしまいます。
2013年にその権利が消滅し、東宝が映像化権を取得します。
こうして連載終了から実に20年を経て2014年にアニメ化、実写映画化が実現しました。
TVアニメ『寄生獣 セイの格率』
テレビアニメ版は『寄生獣 セイの格率』というタイトルで2014年10月から2015年3月にかけて全24話が日本テレビ系列で放送されました。
映画『寄生獣』
実写映画版は『ALWAYS三丁目の夕日』の監督で日本トップのVFXディレクターとして有名な山崎貴さんが監督。
『ALWAYS』でもタッグを組んだ古沢良太さんが脚本に名を連ね、染谷将太さんが主人公の泉新一役で主演。
新一の相棒となるミギーを阿部サダヲさんが演じ(?)、深津絵里さん・橋本愛さん・大森南朋さん・余貴美子さん・北村一輝さん・國村隼さん・浅野忠信さんとそうそうたる面々が出演しています。
映画版は『進撃の巨人』や『SPEC』、『るろうに剣心』などなど、この頃ブームのようになっていた前後編の2部作構成。
2014年11月29日に前編の『寄生獣』が公開され、2015年4月25日に後編となる『寄生獣 完結編』が公開されました。
『寄生獣』が観れる動画配信サービス(ビデオ・オン・デマンド)一覧
『寄生獣』を鑑賞できる動画配信サービスの一覧です。
hulu、U-NEXT、dTV、FOD、Paravi、ビデオマーケット(VM)、Amazonプライム・ビデオ、Netflixそれぞれ動画視聴可能なものに印をつけてあります。
◎は見放題、〇はPPV(ペイ・パー・ビュー)です。
見放題は月額料金だけで好きなだけ視聴ができます。
PPVは月額料金とは別に視聴作品ごとに料金が必要で、期間限定のレンタルです。
アニメ | 映画 | 映画 | |
---|---|---|---|
作品名 | 寄生獣 セイの格率 | 寄生獣 | 寄生獣 完結編 |
放送日/公開日 | 2014年10月 - 2015年3月 | 2014年11月29日 | 2015年4月25日 |
放送/配給 | 日本テレビ | 東宝 | 東宝 |
監督 | 清水健一 | 山崎貴 | 山崎貴 |
主演 | 島﨑信長 平野綾 | 染谷将太 阿部サダヲ | 染谷将太 阿部サダヲ |
hulu | ◎ | ◎ | ◎ |
U-NEXT | |||
dTV | ◎ | ◎ | ◎ |
FOD | 〇400円 | 〇400円 | |
Paravi | |||
VM | 〇324円 | 〇432円 | 〇432円 |
Amazon | 〇324円 | ◎ | ◎ |
Netflix |
2018年8月13日現在の情報です。
配信状況が変わっていることもありますので、最新情報は公式サイトでご確認ください。
『寄生獣』の見どころと感想
『寄生獣』はグロいシーンはあるにはありますが、ホラーやスプラッターというよりは社会派の物語です。
人間はパラサイトに寄生され捕食されてしまうので、人間にとってパラサイトは害悪であり、野蛮な猛獣です。
けれどもパラサイトにしてみれば人を食べるのは、人間が牛や豚や鳥や魚を食べるのと何ら変わりありません。
「むしろ人間と違って一種しか食さないのだから慎ましいではないか」とさえ言います。
確かにそう言われれば人間こそが地球環境にとってみれば寄生獣かもしれません。
こうした環境問題の本質的なテーマをエンターテイメントを通じてわかりやすい形で提起してくれるのがこの作品の魅力的なところです。
私はまだ映画版しか視聴していませんが、もっとこのテーマの部分を掘り下げて丁寧に描いてくれたら良かったのになあというのが率直な感想です。
というのはちょっと原作に寄り添いすぎたんじゃないかなと思うのです。
原作のイメージを崩さないことに縛られて単なる原作のダイジェストになってしまうというのが漫画原作モノの映画にありがちなことです。
けれども『寄生獣』に関して言えば大胆な改変にチャレンジしても良かったんじゃないかと思うのです。
それは原作の連載終了から20年経っているからです。
権利問題によってこの作品は長い間映像化が塩漬け状態になっていました。
だから原作をまったく知らずにアニメや映画を見たという人も多いんじゃないでしょうか。
私自身も原作漫画は連載してた頃に一通り読みました。
でもずいぶん時間が経っているので、正直言ってあまり記憶が残っていなかったんです。
だから映画を見てもかなり新鮮な気持ちで観ることができました。
確かに熱心なファンにとっては実写で大きく原作の魅力が損なわれるのは我慢出来ないことでしょう。
発表からまだそれほど日がたっていない原作ならそうしたファンが大勢います。
なのでまだ原作の熱が冷めていないうちに映像化する場合は原作ファンのことを念頭において制作することは必要でしょう。
でも失礼を承知でいえば『寄生獣』に関しては世間的には古い作品で「そういえばそういう作品あったなあ~」と懐かしむぐらいのものです。
そういう点で他の漫画原作モノとは違ってこの映画のためにつくられた新作ぐらいのアプローチもできたんじゃないでしょうか。
つまり原作のイメージに縛られずに大胆に映画ならではの演出をしても良かったんじゃないかなと思うのです。
もちろんもともととても面白い素材なので、映画として十分に楽しい作品に仕上がっています。
ただ原作に寄せすぎて、ちょっとこじんまりとまとまっちゃったなあというのが残念なだけです。