『最後の命』は2007年に発表された中村文則さんによる小説です。
松本准平監督の熱心なオファーを受け、2014年に柳楽優弥さん主演で映画化されました。
27歳で芥川賞を受賞し、アメリカの文学賞も獲得して世界的にも高い評価を受けている中村文則さんにとって初めて映画化された作品でもあります。
『最後の命』を配信している動画配信サービス(ビデオ・オン・デマンド)一覧
『最後の命』を鑑賞できる動画配信サービスの一覧です。
hulu、U-NEXT、dTV、FOD、Paravi、ビデオマーケット(VM)、Amazonプライム・ビデオ、Netflixそれぞれ動画視聴可能なものに印をつけてあります。
◎は見放題、〇はPPV(ペイ・パー・ビュー)です。
見放題は月額料金だけで好きなだけ視聴ができます。
PPVは月額料金とは別に視聴作品ごとに料金が必要で、期間限定のレンタルです。
作品名 | 最後の命 |
---|---|
公開日 | 2014年11月8日 |
監督 | 松本准平 |
主演 | 柳楽優弥 |
配給 | ティ・ジョイ |
hulu | ◎ |
U-NEXT | ◎ |
dTV | - |
ビデオパス | 〇432円 |
FOD | - |
Paravi | - |
ビデオマーケット | 〇432円 |
Amazon | 〇400円 |
Netflix | - |
2019年1月6日現在の情報です。
配信状況が変わっていることもありますので、最新情報は公式サイトでご確認ください。
『最後の命』の見どころと感想
「日経エンタテインメント」を読んでたら作家・中村文則さんの記事が。
最近はあまり小説を読んでなかったので中村文則さんの作品を読んだことはありませんでした。
中村文則さんは『土の中の子供』という作品で芥川賞を受賞した方で、綾野剛さんとか又吉直樹さんとか芸能人の中にもファンが多いんだそうです。
私自身は純文学はあんまり得意じゃないので、芥川賞作品はなんとなく避けてしまいます。
純文学は「人の心の奥底を掘り下げる」文芸なので、読むとどっと疲れちゃうんです・・・
でも最近ではエンタメ性のある作品も発表していて、2018年は中村文則さんの作品の映画化が3本も控えているとのこと。
ちょっと興味が惹かれたので過去の作品を見てみようかなと思い映画『最後の命』を鑑賞してみました。
『最後の命』のあらすじ
主人公は柳楽優弥さんが演じる明瀬桂人と矢野聖人さんが演じる冴木裕一。
「矢野聖人さんってどっかで見たことある気がするな~」と思ってたら『リーガルハイ』の井出じゃん!
どうしてもシリアスな演技してるのに違和感を感じてしまう・・・
桂人と冴木は小学校からの幼馴染でいつも一緒にいました。
ある日2人は強姦致死事件の現場に居合わせてしまいます。
桂人はそれが原因で人と肌を触れ合うことに抵抗感を感じるようになり内向的な性格となってしまいます。
冴木は逆に性衝動と暴力性に目覚めてしまいます。
2人は高校時代のある出来事をきっかけに疎遠になり、それ以来会っていません。
しかし冴木が急に連絡をしてきて再会します。
桂人は高校時代の同級生である香とつきあっていましたが、香里は精神を病んでおり桂人自身のトラウマもあってか、なかなか関係がうまくいきません。
それを聞いた冴木は具合が悪くなって突然帰ってしまいます。
外出していた桂人が自宅に戻るとそこには女の死体が横たわっていました。
桂人が普段利用していたデリヘル嬢です。
殺人容疑で取り調べを受ける桂人。
尋問する刑事役は滝藤賢一さんですが、見てるだけで超ムカつきます。
さすがの演技力です。
しかし桂人の部屋から冴木の指紋が検出されます。
実は冴木は連続婦女暴行犯として指名手配されていたのです。
容疑は冴木に絞られました。
デリヘル嬢を殺害したのは本当に冴木だったのか。
過去の記憶を紐解きながら桂人は真実に迫ります。
『最後の命』の感想 ※ネタバレ注意
この映画は現在のシーンと過去の回想、そして桂人の妄想が行ったり来たりします。
だから途中でちょっと混乱することもあります。
かなり分かりづらかったのが冴木の告白のシーンです。
冴木はメールで桂人にすべてを告白します。
それを映像上では桂人の夢という形でリアルに描写しています。
冴木はやっちりのレイプを目撃して「勃起した」と言います。
そしてそれ以来セックスに強姦性を求めるようになります。
そのために連続婦女暴行犯として指名手配されてしまうのです。
しかし理性で抑止できない衝動に冴木は苦しみます。
桂人も同じ光景を目撃したものとして冴木の心が分かります。
ひょっとしたら自分も同じかもしれない。
「暴力的な欲望は誰の中にもあって、何かをきっかけに膨らむんじゃないか」
という冴木の言葉は確かにと思わせるものがあります。
と、ここまで演技に引き込まれて見てましたが、ふと場面が変わって今どういうシーンなのかよくわからなくなりました。
「あれ、ここってどんな場面だっけ?」となった時に簡単にさかのぼって見直せるのはビデオオンデマンドの利点です。
何度かリピートして見て、「ああ、そういうことだったのね」と腑に落ちました。
ラストに向かう後半部分は若干シチュエーションが分かりづらいので集中して見ておいた方がいいですよ。
この映画はミステリー仕立てになっているので、サスペンス的にたのしむこともできますが、基本的には出来事とか謎解きは主眼ではありません。
幼少期に強姦現場を目撃したことがトラウマとなって生きづらくなってしまった人間の内面を描いた物語です。
女を殺害したのは本当は誰だったのかということは問題ではなくて、同じトラウマを抱えた者として偏執的な性癖を持ってしまった冴木の心を思いやり、そういう葛藤を持つ人間がどうやって生きていけばいいのかを自問する桂人の苦悩が見どころかなと思います。
捉え方を間違えると性犯罪者への同情を感じてしまうかも知れませんが、それは間違っていると思います。
性犯罪というものは紛れもなく悪質な行為であり社会から抹消されるべきものです。
もし自分の身内が性犯罪の被害者になったら・・・考えるだけで怒りがこみ上げてきます。
ただ犯行を犯す人間もどうしても抑えられない性衝動・暴力性に悩み、苦しんで自分の精神異常を呪い、自分の存在を抹殺するしかないと思い詰めます。
そういう人への救いも必要です。
昔は精神疾患を忌み嫌って隔離したり排除したりしていたのでしょう。
私個人も身近にそういう人にいてもらいたくないし、今後も出会わないようにしていきたい。
けれども隔離や排除は根本的な解決にはなりません。
なによりも自分自身にもその可能性が0ではないということを自覚するべきです。
精神病患者に共感する必要はありませんが、その心の内を少しでも理解すること。
そして平穏な心の状態を維持できるような環境を築き上げること。
そうしたことを考えるきっかけにこういう映画はなります。
とても重たいのでしょっちゅうは見たくありませんが、たまにトライしてみるといいかなあと思います。
≪出演≫
柳楽優弥
矢野聖人
比留川游
内田慈
池端レイナ
土師野隆之介
板垣李光人
りりィ
滝藤賢一
中嶋しゅう
≪監督/演出≫
松本准平
≪プロデューサー≫
中林千賀子
三宅はるえ
吉田正大
≪原作/脚本≫
高橋知由
松本准平
中村文則